監修者プロフィール

森下 浩志
森下 浩志
早稲田大学基幹理工学部出身。在学中よりマーケティングに従事し、月間100万PV超のWebメディア運営等の実績を持つ。2023年に株式会社Wallabeeを創業し、AIメディア事業を成長・譲渡した後、現在はAI検索最適化(GEO)領域に特化したプロダクトを開発。“AIに選ばれるブランドになる“ための新しいマーケティングの研究・実践に取り組んでいる。

流入2倍を実現?「GEO」(AI検索最適化)の海外事例3選

Googleの検索窓にキーワードを打ち込む時代から、ChatGPTやGeminiといったAIに答えを求める時代へとシフトしています。

実際、最新のデータによるとChatGPTは週に約8.8億人以上のユーザーに利用されており※1、この変化に伴い、企業が取るべき戦略も「検索順位を上げること」から「AIに選ばれ、言及されること」へと進化しなければなりません。

本記事では、AI検索時代の新しい最適化手法であるGEO(Generative Engine Optimization)について、具体的な成功事例を交えながら徹底解説します。

※1 出典:First Page Sage「ChatGPT Usage Statistics」(https://firstpagesage.com/seo-blog/chatgpt-usage-statistics/ )

【確認】GEOとは? 引用と言及の違い

GEOとは、ChatGPT、Geminiといった生成AI(LLM)が生成する回答の中に、自社のコンテンツやブランドが表示されるように最適化する手法のことです。

「引用」とは、AIが回答を作成する際に、情報の根拠としてあなたのサイトのURLを参照し、リンクを貼る状態を指します。これは従来の検索順位に近い概念ですが、AI時代のユーザー行動においては十分な成果とは言えません。なぜなら、ゼロクリック検索(=検索結果画面だけで答えが完結し、ユーザーがサイトに訪問しない検索行動)が蔓一般化している現在、リンクが貼られているだけではユーザーの目に留まらない可能性が高いからです。

一方、「言及」とは、AIが生成した回答の本文中で、「〇〇ならこのサービスがおすすめです」といったように、具体的なブランド名や商品名が言及される状態です。単なる「情報源」として裏方で利用されるのではなく、ユーザーの問いに対してAIから「ベストな選択肢」として指名される「言及」の座を勝ち取ることです。

GEO事例①:AI参照トラフィックが半年で倍増?

出典について:この事例は、IEEE SpectrumのCMSプラットフォームを提供するRebelMouseが公開したケーススタディに基づいています。データはベンダー側の報告であり、第三者による検証ではない点にご留意ください。

出典:https://www.rebelmouse.com/can-chatgpt-increase-traffic

ここからは、海外におけるGEOがうまくいった事例についていくつかご紹介します。1つ目は、IEEE Spectrumです。

IEEE Spectrumは、世界最大の技術専門職組織であるIEEEが発行する機関誌で、量子コンピューティング、ロボット工学、AIなどの専門記事を発信しています。

多くの出版社が「AIがユーザーの質問にその場で回答するようになり、サイトへのアクセスが減るのでは」と懸念する中、IEEE SpectrumはむしろAIからの参照トラフィックを伸ばしました。

対策前のIEEE Spectrum

IEEE Spectrumは1964年から続く技術専門誌であり、編集チームは各分野の経験豊富な専門家で構成されています。記事はAI生成ではなく、人間による独自の分析・取材・執筆です。出典元のRebelMouseもこの点を成功の要因に挙げています。

ただし、GEO施策前のサイトの具体的な状態は出典記事には記載されていません。わかっているのは、2021年にCMSをRebelMouseに移行してサイトを全面リニューアルし、その後にGEO施策を段階的に実施したということです。

GEO対策として何を行ったか

RebelMouseの記事では、以下の7つの取り組みが紹介されています。

施策内容
1構造化データの強化見出しの階層化、Q&A形式の採用、構造化マークアップ※2の実装
2明確な分類とタグ付け12の主要トピックを定義し、タグで記事をグループ化
3人間の専門家による執筆AI生成コンテンツではなく、専門家による独自の分析・取材記事
4AIは効率化にのみ活用見出し生成など補助作業にのみAIを活用。記事本文は人間が執筆
5月次テクニカルSEO監査技術面の監査を毎月実施し、修正を迅速に適用
6月次コンテンツ監査編集チームがすべてのコンテンツを月1回レビューし、改善点を特定
7内部リンクの最適化タグページを活用し、関連コンテンツ同士を体系的にリンク

※2 構造化マークアップとは:Webページの情報(記事のタイトル、著者、公開日、Q&Aの内容など)を、検索エンジンやAIが機械的に読み取れる形でHTMLに埋め込む仕組みのことです。人間が見るページの見た目は変わりませんが、AIが「この記事は何について、誰が書いたのか」を正確に理解しやすくなります。

After:GEO対策の成果

RebelMouseの報告によると、以下の成果が得られています。

  • 5,000ページ以上が流入を獲得:過去30日間で5,000ページ以上の記事がAI経由でアクセスを獲得。特定の記事だけでなくサイト全体が評価されている
  • AI経由トラフィックが約100%増加:2025年1月〜6月のAIチャットボット経由のページビュー数・ユーザー数が、その前の5ヶ月間(2024年8月〜12月頃)と比較して約2倍に
  • 訪問あたり2〜3ページ閲覧:AI経由で訪れたユーザーは、1回の訪問で平均2〜3ページを閲覧

IEEE Spectrumの例のポイント

この事例は、「GEO施策だけで成果が出た」というよりも、もともと高品質な専門コンテンツを持っていたメディアが、構造化データや内部リンクなどの技術面を強化したことでAIからの言及がさらに増えたという事例です。

「何をすればAIに引用されるか」の前に、「言及に値するコンテンツが先」という順序を示している点が重要です。

また、行った施策をよく見ると、元々SEO施策として行われていた施策がかなり多いです。そのため、SEO施策を適切に行うことで、GEOにも効果があると言う事例だと言えそうです。

GEO事例②:4週間でブランド可視性が3%→55%へ激増。

出典について:この事例は、Alpha SchoolのコンテンツマーケティングをContently社が代行し、その成果としてContently社が公開したケーススタディです。施策の実行者=報告者である点にご留意ください。

出典:https://contently.com/content-marketing-case-studies/case-study-alpha-school/

Alpha Schoolは、アメリカのオンラインK-12(小学校〜高校)教育を提供する学校です。

質の高いカリキュラムを提供していたにもかかわらず、保護者がChatGPTに「最高のオンライン小学校はどこ?」「ホームスクーリングのカリキュラムはどう選ぶ?」と尋ねても、Alpha Schoolの名前は回答にまったく出てこない状態でした。

何を行ったか:Contently社が実施した4つの施策

Contently社は、GEOの戦略として以下の4つを実施したと報告しています。

1. AIの知識パターンの分析

  • 保護者がオンライン教育について尋ねる質問パターンを洗い出し
  • Alpha Schoolの強みと、AIが優先的に引用するポイントを結びつける設計

2. AIと保護者の両方に響くコンテンツの制作

  • Alpha Schoolの独自の強みが浮き彫りになる比較フレームワークを設計(例:他校との違いがAIにも認識されやすい形)
  • 保護者の多様な質問バリエーションに対応する、明確なQ&A構造の作成

3. 技術的最適化

  • 構造化マークアップ※2を実装し、AIがコンテンツの文脈を正確に理解できるよう設計
  • 権威性を高めるためのコンテンツ配信体制の構築

4. 継続的なモニタリングと改善

  • AIによる引用パターンと競合の動向を追跡
  • データに基づいてコンテンツを改善し、AIモデルの更新にも対応

After:成果の数字

Contently社の報告によると、わずか30日間で以下の成果が出ています。

  • AI検索内でのブランド表示率が3% → 55%に上昇(対策前はAIの回答にAlpha Schoolが出る確率がわずか3%だったのが55%に)
  • ターゲット質問10問中8問でトップ表示:ChatGPTやPerplexityにおいて、狙った質問で最初に名前が挙がるブランドに
  • AI経由のトラフィックが23%増加:ChatGPTのブラウジングモードからの流入が確認
  • 「最初に推薦される学校」の地位を獲得:「オースティンで最高のオルタナティブスクール」と聞くと最初に表示されるように

Contently社の注意点

出典元のContently社はAlpha Schoolのマーケティング代行会社であり、これは自社サービスの実績紹介としての公開です。

また、「ブランド表示率3%→55%」の具体的な測定方法(何回のプロンプトで計測したか、どのAIモデルのどのバージョンで確認したかなど)は、出典記事には詳しく記載されていません。AI検索の回答は質問の仕方やタイミングで変わるため、数字は目安として捉えるのが適切です。

それでもこの事例が示唆するのは、Q&A構造・構造化・比較フレームワークの3点を意識してコンテンツを設計すれば、短期間でもAIの回答に食い込める可能性があるということです。

GEO事例③:AI経由トラフィックの27%が商談化。

出典について:この事例は、Broworks自身が自社ブログで公開した自社実績の報告です。第三者検証ではない点にご留意ください。

出典:https://www.broworks.net/blog/answer-engine-optimization-case-study

Broworksは、Webflow(ノーコードのWebサイト構築ツール)を専門とするSEOエージェンシーです。

彼らが気づいたのは、B2Bの意思決定者の行動変化でした。以前はCMO(最高マーケティング責任者)やマーケティング部長がGoogleで「Webflow SEOエージェンシー」と検索し、上位のサイトを一つずつ確認していました。

しかし最近は、ChatGPTに「B2B SaaS向けの最高のWebflow SEOエージェンシーはどこ?」と尋ね、AIの回答をもとにベンダーを選定するようになっている、というのがBroworksの分析です。

問題は、このAI経由の流入がGoogle Search Console(Googleが提供するアクセス解析ツール)には表示されないこと。アナリティクス上では「直接アクセス」や「ブランド名検索」として記録されるため、見逃しやすいのです。

何を行ったか:「プロンプト」に合わせたサイト再設計

Broworksが自社で実施した施策は、大きく4つです。

1. 構造化マークアップ※2の実装

  • すべての主要ページ、ケーススタディ、ブログ記事に以下のスキーマを追加:
    • FAQスキーマ:よくある質問と回答のペアをAIが機械的に抽出できるようにする
    • 記事スキーマ:記事の著者・公開日・カテゴリ等を明示
    • 組織スキーマ:会社名・事業内容・所在地などの基本情報をAIに伝達

2. プロンプト主導のコンテンツ作成

  • 従来のSEO的な短いキーワード(「Webflow SEO」など)ではなく、ユーザーが実際にChatGPTに入力するような自然な質問文をH2見出しやタイトルに採用
  • 例:「スタートアップ向けの最高のWebflow SEOエージェンシーは?」「生成AIエンジン向けの最適化方法は?」

3. FAQ・まとめセクションの追加

  • ほとんどのページにFAQ(よくある質問)セクションを追加
  • 記事の冒頭に要点まとめを配置し、AIが「引用しやすい短い要約」を抽出できるようにした

4. AI向け情報ページの作成

  • AIが自社について学習するための専用ページ(LLM Info Page)を作成。会社概要・サービス・専門分野を、AIが読み取りやすい構造でまとめたもの

After:成果の数字

Broworksの報告によると、施策開始から90日後に以下の成果が出ています。

  • 全オーガニックトラフィックの10%がAI(LLM)経由:ChatGPT・Claude・Perplexityからの流入
  • そのAI経由トラフィックの27%がSQL(Sales Qualified Lead=商談化した見込み客)に転換
  • AI経由ユーザーの平均滞在時間がGoogle経由の30%増
  • リードの質が高い:「インターンが偶然見つけたサイト」ではなく、CMOやマーケティングリーダーがChatGPTの回答から直接訪問し、商談・受注に至ったケースがある、と報告

この事例のポイント

Broworksの事例で特に注目したいのは、「トラフィックの量」ではなく「質」に焦点を当てている点です。

AI検索を使うユーザーは、「どこがいいか教えて」というすでに購入を検討しているフェーズにいることが多く、従来のGoogle検索経由のユーザーよりも商談につながりやすい、というのがBroworksの実感です。

ただし、Broworksは比較的小規模なエージェンシーです。「27%が商談化」という数字のインパクトは大きいですが、母数(絶対的な訪問者数)は多くない可能性がある点には留意が必要です。

事例から学ぶGEO成功の2つの共通パターン

大手出版社(IEEE Spectrum)、教育機関(Alpha School)、B2Bエージェンシー(Broworks)。

業種もターゲットも異なるこれらの成功事例を分析すると、AI検索で成果を出すための共通の設計が浮かび上がってきます。

パターン①:構造化マークアップ

3事例すべてで、構造化マークアップ※2が施策に含まれています。

マークアップを入れると何が変わるのか? たとえば、あなたの会社のWebサイトに「会社名:Wallabee」「業種:Webマーケティング」「専門分野:SEO・GEO」といった情報がテキストで書いてあったとします。人間は読めば理解できますが、AIが自動的にこれを「会社概要」として認識できるとは限りません。

構造化マークアップは、この情報に「これは会社名です」「これは専門分野です」というラベルをHTMLコード上で付けることで、AIが確実に理解できるようにする仕組みです。

ただし注意点として、構造化マークアップを入れればすぐにAIに言及されるというものではありません構造化マークアップはあくまで「AIが情報を正しく読み取るための補助」であり、言及されるかどうかはコンテンツの質や専門性が前提になります。

パターン②:AIが答えとして使いやすいコンテンツ構造

3事例に共通するのは、記事やページの構造が「AIが回答を生成するときにコピー&ペーストしやすい形」になっていることです。

具体的には:

  • Q&A形式の見出し:「〇〇とは何か?」「〇〇のメリットは?」のように、ユーザーが実際にAIに聞きそうな質問をH2見出しにし、その直下に明確な回答を配置
  • 冒頭に結論:各セクションの最初の2〜3文で「要するに何なのか」を完結させる(AIはここを抜き出して使いやすい)
  • 箇条書き・表の活用:比較情報や手順は、文章で長々と書くのではなく箇条書きや表形式にする

これは実は、読者(人間)にとってもわかりやすい構造そのものです。「AIのため」と構えるより、「誰が読んでも一目でわかる記事構造」を目指す、と考えるほうが実践しやすいかもしれません。

FAQ|GEO活用でよくある質問

Q1. GEOはSEOを置き換える?それとも両方必要?

結論:両方必要です。強固なSEOはGEOの前提条件になります。

AIモデルは学習や検索の過程で、Googleなどの検索エンジンのインデックスやランキング情報を利用しています。そのため、技術的なサイトパフォーマンス、ドメインの権威性、高品質な被リンクといった従来のSEOの基盤がしっかりしているサイトほど、AIにも発見されやすく、言及される確率が高まるとされています。

IEEE Spectrumの事例でも、GEO施策の前提として月次のテクニカルSEO監査が行われていたことが報告されています。

Q2. 成果が出るまでどれくらいかかる?

結論:早ければ4週間で初期変化が見え始めます。ただし安定した成果には3〜6ヶ月の継続が必要です。

  • Alpha School:4週間でAI検索内のブランド表示率が3%→55%に(Contently社報告)
  • Broworks:90日後に全オーガニックトラフィックの10%がLLM経由に(Broworks自社報告)

ただし、これらの成果が他の企業にそのまま再現できるかは保証されていません。特にAI検索の回答は利用するモデル・バージョン・質問の仕方・タイミングによって変わるため、「一度対策したら永久に効果が続く」というものではなく、継続的な更新と改善が必要です

Q3. 企業規模が小さくてもGEOで勝てる?

結論:可能性はありますが、「確実に勝てる」とまでは言い切れません。

今回紹介した3事例のうち、Alpha SchoolとBroworksは大企業ではありません。AIは、Google検索で1位ではないページであっても、構造が整っていて質問に的確に答えるコンテンツであれば引用する傾向があるとされています。

特にニッチな専門分野を持つ中小企業は、大企業がカバーしきれない具体的で専門性の高い質問に対して、的確な回答コンテンツを用意することで、AIの言及を獲得できる可能性があります。

ただし、GEOはまだ発展途上の分野であり、「こうすれば必ず成果が出る」という確立された手法は存在しません。今回の事例は、あくまで成功した事例の報告であり、失敗事例は表に出にくいという点も念頭に置いておく必要があります。

まとめ

GEOは、検索順位を競うための手法ではなく、AIの回答文に「採用される」ための設計思想です。

今回紹介した3つの事例に共通していたのは、以下の2点でした。

  1. 専門性の明示:自社が「何の専門家か」をスキーマや構造化データでAIに明確に伝えている
  2. 答えやすいコンテンツ構造:Q&A形式・比較表・冒頭の要約など、AIがそのまま回答に使える形で情報を設計している

ただし、GEOはまだ「正解」が確立された分野ではありません。今回の3事例はいずれも当事者(サービス提供者側)による報告であり、同じ施策を別の企業が行って同じ成果が出る保証はありません。AI検索の回答アルゴリズムは頻繁に変わるため、今日有効な施策が半年後も有効とは限らないのが現状です。

それでも、「AIが読みやすい構造でコンテンツを整理する」という基本方針自体はユーザビリティの向上にも直結するため、やって損になることはありません。 SEOの延長として、できるところからGEO的な視点を取り入れていくことをおすすめします。

上部へスクロール